ここ最近、「日本の帰化要件が厳しくなる」というニュースが相次いで報じられています。政府が、これまでよりも長い在日年数を求めたり、税金・社会保険料の納付状況をより厳しくチェックしたりする方向で検討している、という内容です。
ここでまず押さえておきたいのは、「現時点においてすでに法律が変わったわけではない」という点です。現行の国籍法5条は、一般の帰化(いわゆる普通帰化)について、引き続き5年以上日本に住所を有することを要件とする従来の規定をおいており、この条文について改正がなされたわけではありません。
一方で、政府は「帰化は日本国籍を取得することであり、永住許可よりもいっそう日本社会へのコミットが深くなる。そうだとすれば、帰化の方が永住許可よりも要件が緩いのはおかしいのではないか」という問題意識を持っています。そこで、実務運用のレベルで「5年以上」ではなく「原則10年以上」の在日歴を求めていく案が検討されているようなのです。つまり、法律の条文そのものを改正するのではなく、審査基準や内部運用を見直すことで、実質的に帰化のハードルを引き上げていく方向性が
報道されています。
併せて、税金や社会保険料の滞納があるかどうか、交通違反や軽微な刑事罰を含めた「素行善良要件」を、これまで以上に厳格に見るという案も取り沙汰されています。もともと法務省は、「帰化はあくまで法務大臣の裁量による許可であり、形式要件を満たしていても必ず許可されるわけではない」と説明してきましたが、今後はその裁量部分がより一層厳しい方向へ振れていく可能性が高いと考えられます。
こういった厳格化政策の背景としては、厳格な外国人政策を標榜する高市政権の誕生が一つの要因であることは言うまでもありませんが、実際に永住許可と帰化との間のバランスが取れていないという問題があります。永住許可は、原則10年以上の在留が必要とされ、収入・資産・納税状況などについても厳格な基準が運用されています。他方で、国籍というより重い法的地位が5年で申請可能という現状に対し、「制度の逆転だ」との批判がこれまで政治家や専門家の間から出ていました。
では、帰化を考えている外国人にとって、今回の動きは何を意味するのでしょうか。現時点では、「5年以上なら誰でも早く申し込んだ方が得」という単純な話ではありません。むしろ、今後は「日本での生活基盤がどれだけ安定しているか」「納税・社会保険の履行状況はしっかりしているか」「違反歴がないか」といった点が、これまで以上に丁寧にチェックされると考えた方が現実的です。
また、運用が「原則10年以上」に近づくとしても、配偶者が日本人である場合や、日本で生まれ育った人、元日本国籍者などの「簡易帰化」のカテゴリーまで一律に10年とするのかどうかは、現時点では確定していません。報道で伝えられているのは方向性に過ぎず、具体的な例外や柔軟な運用の幅は、今後のガイドラインや実務運用の中で明らかになっていくと見込まれます。
いずれにせよ、帰化を検討している方にとって重要なのは、「要件が厳しくなるから諦める」のではなく、「何が求められるのかを早めに把握し、準備期間を意識する」ことです。日本での在留歴、就労状況、納税や年金の支払い状況、家族の状況、日本語能力などを一度整理しておくと、新しい基準が示されたときにも、自分がどの位置にいるのかを冷静に判断しやすくなります。
報道ベースの情報はどうしても不安をあおりがちですが、現段階では「国籍法の条文は変わっておらず、政府が運用見直しを検討している段階」という事実関係を押さえた上で、自分のケースについて専門家に相談し、数年単位での計画を立てることが現実的な対応と言えるでしょう。
