───「祖父母が日本人」のご家族が日本で暮らすための基本知識───
ブラジルやペルーなど、海外の日系社会で生まれ育った方の中には、「祖父母が日本人だけれど、自分も日本で暮らしたり働いたりできるのか」「いわゆる“サンセイ・ビザ”というものがあると聞いたが、実際はどのような在留資格なのか」と疑問をお持ちの方が少なくありません。
日本の入管法上、「日系三世」に対して用意されている代表的な在留資格は、「定住者」と呼ばれるものです。法律上は「定住者ビザ」という言い方はしませんが、一般にはこの呼び方で説明されることが多くなっています。
日系二世・三世・四世とその家族について、日本とのつながりがあることを重視して、定住者の枠組みで受け入れる仕組みが整えられています。
つまり、三世本人だけでなく、その配偶者や未成年の子どもも、一定の条件を満たせば同じ「定住者」として来日することが可能です。
以下では、日系三世とは誰を指すのか、どのような在留資格が与えられるのか、その条件や家族のビザとの関係まで、少し丁寧に整理していきます。
1 入管実務が想定している「日系三世」とは
一般的に「日系三世」と言うと、「祖父母のどちらかが日本人だった人」をイメージされると思います。日本の入管制度も基本的には同じ考え方で、祖父母の世代に日本人、あるいは元日本人がいることを前提に、二世(三世の親)と三世本人との血縁関係をたどっていきます。
もっとも、法律の世界では、単に「三世です」と自己申告するだけでは足りません。
祖父母が日本人であったこと、二世である親がその実子であること、自分がそのまた実子であることを、戸籍や出生証明書などの公的な書類でつないでいき証明する必要があります。どの時点で日本国籍を離脱したかなど、祖父母や親の国籍の履歴によっては、入管上の扱いが微妙に変わることもあります。
その結果として、日系三世の多くは、入管の分類上「定住者告示三号」や「定住者告示四号」と呼ばれるグループに位置付けられます。告示三号は「日本人の子として出生した者の実子」、告示四号は「かつて日本国籍を持ち日本に本籍を有したことのある者の実子の実子」を対象とするもので、どちらも典型的な日系三世に対応する枠組みです。
細かい号数はともかくとして、「祖父母に日本人(あるいは元日本人)がいて、その子ども(申請者の親)と、自分との血のつながりを証明できるかどうか」が、日系三世として定住者の在留資格を取れるかどうかの大きな入口になる、というイメージを持っていただくと分かりやすいと思います。
2 日系三世に与えられる在留資格は「定住者」
日系三世本人が日本で長期的に暮らす場合、多くは在留資格「定住者」が使われます。外務省や出入国在留管理庁の案内でも、日系人の二世・三世・四世とその家族は、定住者の枠でビザ申請を行うことが示されています。
定住者は、他の就労ビザのように「教授」「技術・人文知識・国際業務」といった活動内容で区分されるのではなく、「特別な理由を考慮して一定期間の在留を認める身分系の在留資格」です。したがって、就労活動の内容に制限はありません。「定住者」には、日系人のほか、日本人や永住者との離婚後も日本に残ることを希望する人、日本人の子どもを同居して監護養育する親、難民として認定された人など、さまざまなケースが該当します。
日系三世について言えば、次のような性格があります。
- 日本との血縁的なつながりが明確であること
- 家族全体で日本での生活基盤を築くことを前提にしていること
- 将来的に永住許可へつなげていくことも視野に入ること。
つまり、単なる「長期観光」や短期的な就労ではなく、「日本とのゆかりのある家族として、腰を据えて生活していく」ための土台となる在留資格だと考えるとイメージしやすいでしょう。
3 どのような条件を満たせば「日系三世の定住者」になれるのか
日系三世として定住者の在留資格を取得するためには、大きく分けて三つのポイントがあります。
第一は、血縁関係を裏付ける資料です。
祖父母が日本人、あるいは元日本人だったことを示す戸籍謄本や除籍謄本、親の出生証明書や婚姻証明書、自分自身の出生証明書などを組み合わせて、「日本人の孫」であることを客観的に証明していきます。
日本の在外公館も、第三世代の日系フィリピン人や日系ブラジル人のビザ申請の際には、戸籍謄本など日本人の血統を示す書類を要求していることを明示しています。
第二は、「素行が善良であること」、すなわち犯罪歴や入管法違反の履歴がないことです。
定住者告示三号や四号の条文上も「素行が善良であるもの」と明記されており、申請時には素行が善良であることを証明する資料として、本国の犯罪経歴証明書などの提出が求められます。
外務省の案内でも、三世ビザの申請にあたっては犯罪経歴証明書の提出が必要である旨が記載されています。
第三は、日本で生活していくための経済的基盤が見込まれることです。
定住者ビザの審査では、どの類型であっても、申請人やその家族が日本で生活を維持できるかどうかが重視されます。
移民専門の行政書士の解説などでも、長期在留者の審査では収入や雇用形態、扶養家族の数などを総合的に確認し、安定した生計が立てられるかどうかがポイントになると説明されています。
そのほか、日本語能力や日本での支援者の有無といった点も、実務上はプラス材料として評価されることがありますが、日系三世の定住者については、特定技能や高度専門職のように明確な試験合格を要件とする仕組みにはなっていません。
あくまでも、家族として日本で暮らす必要性と、その準備が整っているかどうかを、全体として判断されることになります。
4 在留期間と就労の自由度
日系三世として定住者の在留資格を得た場合、日本でどのように働けるのか、どのくらいの期間滞在できるのかは、多くの方が気にされる点です。
まず、定住者は原則として就労制限がありません。
工場勤務、介護、飲食店、コンビニエンスストア、オフィスワークなど、資格外活動許可を取らなくても、幅広い職種で働くことができます。定住者の在留カードにも「就労制限なし」と記載され、日本人と同様に職種を問わず就労可能であることが明記されています。
一方、在留期間には上限があります。
定住者に与えられる在留期間は、六か月、一年、三年、五年のいずれかであり、在留期限が到来するたびに更新手続が必要です。これは、永住者との大きな違いであり、永住者が在留期間の制限なく日本に住み続けられるのに対し、定住者は一定期間ごとに「今後も在留を認めるかどうか」の審査を受けることになります。
もっとも、一定期間きちんと働き、税金や社会保険料を納め、日本で安定した生活を続けていれば、更新が繰り返し許可されるのが一般的です。長期的には、定住者としての在留実績を重ねた後、永住許可申請を検討する、という流れも一般的です。
5 日系三世の配偶者と子どもの在留資格
「自分だけでなく、配偶者や子どもも一緒に日本に行けるのか」という質問は、日系三世のご相談で非常によく出てきます。
配偶者については、定住者告示五号に「日系二世・三世の定住者の配偶者」を定住者として受け入れる規定があります。
子どもについては、少し誤解が生じやすいポイントがあります。
「日系三世の子だから日系四世ビザになる」と単純に思われがちですが、実際にはそうではありません。
親である日系三世が定住者として在留しており、その扶養を受けて生活する未成年かつ未婚の実子である場合に限り、「定住者(定住者告示六号)」として在留資格を取得できます。
日系四世向けに用意されている「特定活動(日系四世)」は、年齢制限や日本語能力、受入れサポーターなど条件が厳しく、別の枠組みです。
このように、日系三世本人だけでなく、その配偶者や未成年の子どもも含めて、家族単位で日本に移住しやすいように制度設計されている点は、定住者ビザの大きな特徴と言えます。
6 申請の流れと必要書類のイメージ
具体的な申請手続としては、日本側にいる親族などが地方出入国在留管理局に対して「在留資格認定証明書交付申請」を行い、その認定証明書をもとに、海外の日本大使館・総領事館でビザの発給を受ける、という流れが一般的です。
必要書類はケースによって変わりますが、日系三世の場合、概ね次のような資料が中心になります。
- 日本人である祖父母、あるいは元日本人である祖父母の戸籍謄本や除籍謄本
- 親(二世)の出生証明書や婚姻証明書など、祖父母との続柄を示す書類
- 自分自身の出生証明書など、日本人の孫であることを証明する書類
- 本国の犯罪経歴証明書
- 日本での身元保証人の書類、収入証明、住民票など、生活基盤に関する資料
重要なのは、「書類を一式そろえれば必ず許可される」という性質のビザではなく、提出された資料をもとに、日本とのつながりや生活基盤、素行の良さなどが総合的に判断されるという点です。
同じ三世であっても、家族構成やこれまでの生活状況によって審査結果が変わることがあるため、事前に自分のケースを整理し、必要な証拠を洗い出しておくことが大切になります。
7 まとめ ──「日系三世」と「定住者」の関係を正しく理解する
日系三世の在留資格について一言でまとめると、次のようになります。
祖父母が日本人、あるいは元日本人であることを公的書類で証明できれば、日系三世本人は在留資格「定住者」として日本で暮らし、自由に働く道が開けます。
また配偶者や未成年の子どもも、条件を満たせば同じく定住者として家族そろって日本に移住することが可能です。
ただし、血縁関係の証明、素行の良さ、経済的基盤などを総合的に審査されるため、事前準備と丁寧な書類作成が不可欠です。
日系三世として日本への移住や長期滞在を考える際には、・自分はどのルートで定住者になり得るのか
- 家族はどの在留資格が適切か
- どのような証拠資料を準備すべきか
を一つずつ整理していくことが重要です。
制度の細部や最新の運用は、国籍や在住国、家族構成によっても変わり得ます。
実際に申請を検討される場合には、出入国在留管理庁や在外公館の公式情報を確認しつつ、必要に応じて専門家に個別の事情を相談し、ご自身のケースに合った最適なルートを検討されることをお勧めします。